反対仕訳(逆仕訳)とは?返品・再振替での使い方と、申告後の間違いの直し方

反対仕訳再振替複式簿記決算確定申告

「登録した仕訳を取り消したいけど、削除していいの?それとも反対仕訳?」——複式簿記を始めた個人事業主の方がつまずきやすいところです。この記事では、反対仕訳(逆仕訳)の意味と使う場面、そして入力ミスや申告後の誤りをどう直すかを整理します。

反対仕訳とは

反対仕訳は、登録済みの仕訳の借方と貸方を入れ替えた仕訳です。元の仕訳と合わせると金額が0になり、取引を打ち消せます。

  • 元の仕訳 — 借方: 消耗品費 11,000円 / 貸方: 現金 11,000円
  • 反対仕訳 — 借方: 現金 11,000円 / 貸方: 消耗品費 11,000円

元の仕訳を消さずに残すので、「いつ・何を取り消したか」が帳簿に残ります。

反対仕訳を使う場面

返品・キャンセルで取引が後から取り消されたとき

いったん成立した取引が、あとで返品やキャンセルになった場合は、取り消された日付で反対仕訳を入れます。

  • 11月20日 — 借方: 売掛金 55,000円 / 貸方: 売上高 55,000円
  • 12月5日(キャンセル) — 借方: 売上高 55,000円 / 貸方: 売掛金 55,000円

一部だけの返品・値引きなら、その金額で同じ形の仕訳を入れます。

年末の未払い・前払いを翌年に戻すとき(再振替)

年末の決算で、翌年分の費用を「前払費用」に振り替えたり、まだ払っていない費用を「未払費用」として計上したりした場合は、翌年の1月1日に反対仕訳を入れて元の科目に戻します。これを再振替(さいふりかえ)といいます。

たとえば、10月1日に1年分の保険料24,000円を払い、翌年分の9か月分(18,000円)を前払いとして繰り延べる場合です。

  • 12月31日 — 借方: 前払費用 18,000円 / 貸方: 保険料 18,000円
  • 翌年1月1日(再振替) — 借方: 保険料 18,000円 / 貸方: 前払費用 18,000円

再振替の対象になるのは、主に前払費用・未払費用・前受収益・未収収益(経過勘定)と、年末に残った消耗品を振り替えた貯蔵品です。

個人事業主は再振替が要らないことも多い

所得税では、次の扱いが認められているため、再振替をしなくて済む場面が多くあります。

  • 年末の未払い: 12月31日までに、債務が成立し、支払う原因となる事実が発生し、金額を合理的に計算できるものは、その年の経費にできます(所得税基本通達37-2)。12月分の電気代を1月に払うなら、12月31日に「水道光熱費 / 未払金」、支払った日に「未払金 / 普通預金」とすれば、再振替は不要です
  • 短期の前払費用: 支払った日から1年以内に提供を受けるサービスの前払いは、継続して支払った年の経費にしていれば、その扱いが認められます(同37-30の2)。上の保険料の例も、毎年この扱いにしているなら前払費用への振り替えは不要です
  • 消耗品: 毎年おおむね一定量を買って経常的に使う事務用品などは、継続して買った年の経費にできます(同37-30の3)

反対仕訳を使わなくてよい場面

入力ミスは「修正」でよい

金額や科目の打ち間違いは、反対仕訳を入れずに仕訳そのものを修正すれば十分です。会計ソフトに訂正・削除の履歴が残っていれば、何をいつ直したかは後から確認できます。

国税庁は、令和9年分から、優良な電子帳簿の保存などの要件を満たすと青色申告特別控除が最高75万円になることを案内しています。優良な電子帳簿の要件の1つが「訂正・削除・追加等の履歴が残ること」です。修正しても反対仕訳でも、履歴が残る形で直すことが大切です。

申告した年の誤りに後から気づいたとき

ここが一番間違えやすいところです。申告が済んだ年の誤りは、その年の帳簿を直し、申告をやり直します。

  • 税額が増える(所得が少なすぎた)場合 → 修正申告
  • 税額が減る(所得が多すぎた)場合 → 更正の請求(原則として法定申告期限から5年以内)

「今年の日付で反対仕訳を入れて直す」と、誤りのあった年ではなく今年の所得が変わってしまい、どちらの年も正しくなくなります。返品やキャンセルのように取引そのものが今年取り消された場合とは区別しましょう。

家事按分した仕訳の反対仕訳

事業とプライベートで按分した仕訳を打ち消すときは、事業分と事業主貸の分の両方を戻します。

  • 元の仕訳(通信費10,000円・事業割合60%) — 借方: 通信費 6,000円・事業主貸 4,000円 / 貸方: 普通預金 10,000円
  • 反対仕訳 — 借方: 普通預金 6,000円 / 貸方: 通信費 6,000円、借方: 普通預金 4,000円 / 貸方: 事業主貸 4,000円

KS経費&売上管理での操作

KS経費&売上管理の複式簿記モードでは、仕訳帳一覧から仕訳を開き、「反対仕訳を作成」ボタンで反対仕訳を登録できます。

  1. 仕訳帳一覧から、取り消したい仕訳を開きます
  2. 「反対仕訳を作成」を押すと、元の仕訳と反対仕訳が並んで表示されます
  3. 仕訳日(返品なら取り消された日、再振替なら翌年1月1日)を指定して登録します

家事按分した仕訳は、事業分と事業主貸の分に分けて自動で打ち消します。同じ仕訳の反対仕訳は1回だけ登録できます。減価償却など固定資産台帳から作った仕訳は、固定資産台帳から修正してください。年末の作業全体は決算準備(家事按分・減価償却・棚卸)もご覧ください。

よくある質問

反対仕訳と「赤伝」は同じですか?

紙の伝票の時代に、金額を赤字(マイナス)で書いて取り消す方法を「赤伝」「赤黒訂正」と呼びました。会計ソフトでは、マイナスの金額の代わりに借方と貸方を入れ替えた反対仕訳で同じことをします。

反対仕訳を間違えて登録しました

作った反対仕訳を削除すれば元に戻ります。元の仕訳には影響しません。

申告前に去年の仕訳の間違いに気づきました

まだ申告していない年なら、その年の仕訳をそのまま修正します。申告した後なら、上の「申告した年の誤りに後から気づいたとき」のとおり、修正申告または更正の請求をします。

まとめ

  • 反対仕訳は、借方と貸方を入れ替えて元の仕訳を打ち消す仕訳
  • 使う場面は、返品・キャンセル(取り消された日)と再振替(翌年1月1日)
  • 個人事業主は、未払金・短期前払費用・消耗品の扱いで再振替が要らないことも多い
  • 入力ミスは修正でよい。申告した年の誤りは、その年を直して修正申告・更正の請求

参考(国税庁)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務上の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家や所轄の税務署にご確認ください。

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