簡易課税制度とは?みなし仕入率と2割特例・3割特例との比べ方、届出の期限【個人事業主】

消費税簡易課税2割特例インボイス個人事業主

「2割特例が2026年分で終わるらしいけど、来年からの消費税はどう計算すればいい?」——インボイス登録をした個人事業主の方から、この時期によく聞かれる悩みです。選択肢のひとつが簡易課税制度です。この記事では、簡易課税の仕組みと計算例、2割特例・3割特例との比べ方、そして届出書の期限を、国税庁の資料をもとに整理します。

簡易課税制度とは

消費税の納付額は、原則として「売上で預かった消費税 − 仕入や経費で支払った消費税」で計算します。これを本則課税(一般課税)といいます。

簡易課税は、このうち「支払った消費税」を実額で集計する代わりに、売上の消費税 × みなし仕入率で計算する方法です(消費税法37条)。みなし仕入率は業種ごとに決まっていて、たとえばサービス業なら50%です。

  • 仕入や経費の消費税を1件ずつ集計しなくてよい
  • 売上の消費税と業種が分かれば、納める税額が決まる
  • 実際の経費が少ない業種ほど、本則課税より納める額が少なくなりやすい

本則課税・簡易課税・2割特例のおおまかな違いは、消費税の2割特例とは?でも紹介しています。

使える人:基準期間の課税売上高が5,000万円以下

簡易課税を使えるのは、次の2つを満たす課税事業者です。

  1. 基準期間の課税売上高が5,000万円以下であること。個人事業主の基準期間は前々年です(2027年分なら2025年の課税売上高)
  2. 事前に消費税簡易課税制度選択届出書を所轄の税務署に出していること

基準期間の課税売上高が5,000万円を超える年は、届出書を出していても簡易課税は使えず、本則課税で計算します。

みなし仕入率:業種ごとに6つの区分

みなし仕入率は、事業の種類によって次の6つに分かれます(消費税法施行令57条)。

  • 第1種事業(卸売業): 90%
  • 第2種事業(小売業、農林水産業のうち飲食料品の譲渡に係る事業): 80%
  • 第3種事業(農林水産業のうち飲食料品の譲渡以外、鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業): 70%
  • 第4種事業(第1〜3種・第5種・第6種以外の事業。飲食店業など): 60%
  • 第5種事業(運輸通信業、金融・保険業、サービス業。飲食店業に当たるものを除く): 50%
  • 第6種事業(不動産業): 40%

フリーランスのデザイナーやエンジニア、コンサルタントなどの多くは第5種事業(50%)に当たります。どの区分になるか迷う場合は、税務署に確認しましょう。

2種類以上の事業をしている場合

たとえば「物販(小売業)とサービス業」のように複数の事業をしている場合は、原則として事業ごとに売上を分け、それぞれのみなし仕入率で計算します。そのうえで、次の特例があります。

  • 1種類の事業の課税売上高が全体の75%以上なら、その事業のみなし仕入率を全体に使える
  • 3種類以上の事業をしていて、2種類の合計が全体の75%以上なら、その2種類のうち高いほうの率をその事業に、低いほうの率をそれ以外の売上に使える

売上を事業ごとに分けていない部分は、分けていない事業のうち最も低いみなし仕入率で計算することになります。複数の事業をしている方は、日々の記帳で売上を事業ごとに分けておくことが大切です。

計算例:本則課税・簡易課税・2割特例・3割特例を比べる

ここでは分かりやすくするため、国税と地方消費税をまとめた概算で比べます(実際の申告では国税分を計算し、地方消費税はその割合で計算します)。

前提: サービス業(第5種事業)の個人事業主。1年の売上の消費税が60万円、経費で支払った消費税が10万円。

  • 本則課税: 60万円 − 10万円 = 50万円
  • 簡易課税: 60万円 − 60万円 × 50% = 30万円
  • 2割特例: 60万円 × 20% = 12万円
  • 3割特例: 60万円 × 30% = 18万円

同じ売上の消費税60万円でも、業種が変わると簡易課税の結果が変わります。

  • 卸売業(90%): 60万円 × 10% = 6万円
  • 小売業(80%): 60万円 × 20% = 12万円
  • 建設業・製造業など(70%): 60万円 × 30% = 18万円
  • 飲食店業など(60%): 60万円 × 40% = 24万円
  • 不動産業(40%): 60万円 × 60% = 36万円

簡易課税で納める割合は「100% − みなし仕入率」です。つまり、みなし仕入率が80%なら2割特例と同じ、70%なら3割特例と同じになります。

設備投資をした年など、実際に支払った消費税が多い年は、本則課税のほうが少なくなることもあります。どの方法が有利かは年ごとの実態で変わるため、迷ったら税理士や税務署に確認してください。

2割特例の終了と3割特例:2027年分からどう選ぶか

インボイス登録をきっかけに免税事業者から課税事業者になった方が使える2割特例は、令和8年9月30日の属する課税期間までの措置です。暦年で申告する個人事業主は2026年分(令和8年分)が最後です。

令和8年度税制改正で、個人事業主に限って、2027年分(令和9年分)と2028年分(令和10年分)は納める税額を売上の消費税の3割とできる3割特例が設けられました。国税庁の資料では、2割特例と同じく、インボイス登録(または課税事業者選択届出書の提出)によって免税事業者でなくなる年に限って使え、使うときは確定申告書にその旨を付記することとされています。法人は使えません。

3割特例を使える方が2027年分・2028年分を考えるときの目安は次のとおりです。

  • 卸売業(90%)・小売業など(80%): 簡易課税のほうが納める額が少ない
  • 建設業・製造業など(70%): 簡易課税と3割特例が同じ
  • 飲食店業(60%)・サービス業(50%)・不動産業(40%): 3割特例のほうが納める額が少ない

基準期間の課税売上高が1,000万円を超えて、インボイス登録と関係なく課税事業者になる年は、3割特例は使えません。その場合は本則課税と簡易課税のどちらかで考えます。2029年分(令和11年分)以降は、3割特例はなくなります。

届出の期限:原則は前年12月31日まで

簡易課税を使うには、使いたい課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出します。個人事業主なら、使いたい年の前年12月31日までです。2027年分から使いたいなら、原則は2026年12月31日までになります。

2割特例・3割特例を使った翌年は、確定申告期限まででよい

2割特例や3割特例を使ったインボイス発行事業者は、その翌年分の確定申告期限までに届出書を出せば、その翌年分から簡易課税を使えます(平成28年改正法附則51条の2第6項など)。国税庁の資料では次の例が示されています。

  • 2026年分(令和8年分)を2割特例で申告した → 2027年分の消費税の確定申告期限(令和10年3月31日)までに出せば、2027年分から簡易課税
  • 2028年分(令和10年分)を3割特例で申告した → 2029年分の消費税の確定申告期限(令和12年4月1日)までに出せば、2029年分から簡易課税

申告のときに本則課税と簡易課税の両方を計算してから決められるのは助かりますが、届出書には「その年分から適用する」旨を書いて出す必要があります。

免税事業者がインボイス登録をする年

免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間にインボイス登録を受け、登録日から課税事業者になる場合は、登録を受けた課税期間中に届出書を出せば、その課税期間から簡易課税を使えます。

一度選ぶと2年間はやめられない

簡易課税をやめるときは「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を出します。ただし、事業を廃止した場合を除き、簡易課税を使い始めた課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、この届出書は出せません(消費税法37条6項)。つまり、最低2年間は続けて使うことになります。

不適用届出書の効力は、出した日の属する課税期間の翌課税期間からです(同条7項)。翌年に大きな設備投資を予定している場合などは、本則課税に戻すタイミングにも気をつけましょう。

また、調整対象固定資産や高額特定資産を取得して本則課税で仕入税額控除をした場合などは、一定の期間、簡易課税の届出書を出せない決まりもあります(同条3項)。心当たりのある方は税務署に確認してください。

KS経費&売上管理での確認方法

KS経費&売上管理の複式簿記モードでは、帳票メニューの消費税集計表で、1年分の売上・経費を税率別に集計できます。

  1. 集計する年を選ぶと、売上の消費税・経費の消費税が税率別に表示されます
  2. 「簡易課税試算(事業区分)」で第1種〜第6種を選ぶと、簡易課税で計算した納付税額の目安が出ます
  3. 2割特例・3割特例(年分に応じて切り替わります)の目安と並べて比べられます

あくまで帳簿にもとづく目安ですが、届出書を出すかどうかを考える材料になります。機能の詳細は消費税集計表のページをご覧ください。日々の取引の登録はレシート読み取り(OCR)が便利です。

よくある質問

簡易課税の届出書を出していても2割特例は使えますか?

使えます。国税庁の資料では、2割特例は一般課税と簡易課税のどちらを選んでいる場合でも適用でき、簡易課税の届出書を出していても申告のときに2割特例を選べるとされています。3割特例との関係を含め、申告の前に国税庁の最新の案内を確認してください。

届出書を出し忘れたら、その年は簡易課税を使えませんか?

原則として、届出書を出した年の翌年分からの適用になります。ただし、前の年に2割特例・3割特例を使っていた方は、その年分の確定申告期限までに出せばその年分から使えます。また、免税事業者がインボイス登録をした課税期間は、その課税期間中に出せばその課税期間から使えます。

簡易課税を選んだ翌年にやめられますか?

事業を廃止した場合を除き、使い始めてから2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でないと、不適用届出書を出せません。最低2年間は続ける前提で選びましょう。

副業でサービス業と物販の両方をしています。どの率を使いますか?

原則として、売上を事業ごとに分けて、それぞれのみなし仕入率(サービス業50%、小売業80%など)で計算します。1つの事業の売上が全体の75%以上なら、その率を全体に使える特例もあります。売上を分けていない部分は低いほうの率になるので、記帳のときに分けておきましょう。

まとめ

  • 簡易課税は、売上の消費税 × みなし仕入率(90〜40%)で仕入の消費税を計算する制度。基準期間(前々年)の課税売上高が5,000万円以下の年に使える
  • 届出書は原則、使いたい年の前年12月31日まで。2割特例・3割特例を使った翌年分は、その年分の確定申告期限まででよい
  • 個人事業主の2027年分・2028年分は3割特例と比べる。卸売業・小売業は簡易課税、サービス業などは3割特例のほうが少なくなる
  • 一度選ぶと最低2年間は続ける。設備投資の予定がある年は本則課税との比較も
  • 判断に迷うときは、税務署や税理士に確認する

参考(国税庁・e-Gov)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務上の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家や所轄の税務署にご確認ください。

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