少額減価償却資産の特例とは?40万円未満の備品を一括で経費にする条件と注意点【青色申告】

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「年内に仕事用のパソコンを買い替えたいけど、全額を今年の経費にできるの?」——年末が近づくと、こうした相談が増えます。青色申告をしている個人事業主には、一定額未満の備品を買った年に全額経費にできる特例があります。これが少額減価償却資産の特例です。

2026年(令和8年)度の税制改正で、対象になる金額が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。この記事では、使える人、対象になる資産、上限額と期限、ほかの方法との違いを、国税庁の資料と法令をもとに整理します。

そもそも減価償却とは

パソコンや車、機械のように長く使う資産は、買った年に全額を経費にせず、法令で決められた耐用年数に分けて少しずつ経費にします。これを減価償却といいます。たとえばパソコンは耐用年数4年なので、原則として4年かけて経費にしていきます。

ただし、金額が小さいものまで毎年計算するのは手間がかかります。そこで、金額に応じて次のような簡単な方法が用意されています。

  • 10万円未満: 買った年に全額経費(だれでも使える)
  • 20万円未満: 3年間で3分の1ずつ経費(一括償却資産。だれでも使える)
  • 40万円未満: 買った年に全額経費(少額減価償却資産の特例。青色申告の人だけ)

減価償却の基本は減価償却とは?の記事で詳しく解説しています。

少額減価償却資産の特例とは

この特例は、青色申告をしている中小事業者が、取得価額(買った金額)が一定額未満の減価償却資産を買って事業に使い始めたとき、その取得価額の全額を、使い始めた年の経費にできる制度です(租税特別措置法28条の2)。

対象になる金額(取得した日で変わります)

国税庁のタックスアンサー(No.2100、令和8年4月1日現在)では、対象は次のとおりです。

  • 2026年(令和8年)4月1日以後に取得: 取得価額 10万円以上40万円未満
  • 2026年(令和8年)3月31日までに取得: 取得価額 10万円以上30万円未満

10万円未満のものは、この特例を使わなくても全額経費になるため、特例の対象は10万円以上のものです。

金額の基準は「いつ取得したか」で決まります。2026年の確定申告では、3月までに買ったものは30万円未満、4月以後に買ったものは40万円未満が基準です。

適用期限

この特例を使えるのは、2029年(令和11年)3月31日までに取得した資産です。令和8年度の税制改正で、金額の引き上げとあわせて期限が3年延長されました。期限後の扱いは、今後の税制改正で決まります。

年間の上限は300万円

特例で経費にできるのは、1年間の取得価額の合計で300万円までです。300万円を超えた分は、通常の減価償却(または一括償却)で経費にします。

また、開業した年・廃業した年は、上限が月割りになります。

  • 上限 = 300万円 ÷ 12 × その年に事業をしていた月数(1か月未満の端数は1か月)

たとえば9月15日に開業した年は、9月〜12月の4か月なので、上限は 300万円 ÷ 12 × 4 = 100万円 です。

使える人・使えない人

使える人

  • 青色申告をしている個人事業主
  • 常時使用する従業員の数が400人以下であること(租税特別措置法施行令18条の5)
  • 対象の所得は、事業所得・不動産所得・山林所得

従業員400人以下という条件は、ほとんどの個人事業主があてはまります。

使えない人・使えないケース

  • 白色申告の人: この特例は使えません。10万円未満の全額経費と、20万円未満の一括償却資産は使えます
  • 副業で雑所得として申告している人: 特例の対象は事業所得・不動産所得・山林所得なので、雑所得の業務には使えません
  • 貸し付けるための資産: 主要な業務として行う貸付けを除き、人に貸す目的の資産は対象外です(同施行令18条の5第2項)
  • 一括償却資産として処理したものや、ほかの特別償却などの適用を受けたものは対象外です

判定のポイント

「買った日」ではなく「使い始めた年」の経費

特例で経費になるのは、事業に使い始めた年です。12月に注文しても、届いて使い始めたのが翌年1月なら、翌年の経費になります。年内の経費にしたい場合は、12月31日までに届いて、実際に事業で使い始めていることが必要です。

税込・税抜はふだんの経理方式で判定

取得価額に消費税を含めるかどうかは、ふだんの経理方式に従います(国税庁タックスアンサーNo.2100)。

  • 税込経理の人: 消費税込みの金額で判定
  • 税抜経理の人: 消費税抜きの金額で判定
  • 免税事業者: 税込経理になるため、消費税込みの金額で判定

たとえば税込43万円(税抜約39万円)のパソコンは、税抜経理なら40万円未満ですが、税込経理では40万円以上になるため特例の対象外です。

取得価額には付随費用も含める

取得価額には、本体の代金だけでなく、送料・設置費用など事業に使うためにかかった費用も含めます(所得税法施行令126条)。本体が39万円でも、送料や設置費用を足して40万円以上になると対象外です。

1組で使うものはまとめて判定

10万円未満・20万円未満かどうかは、通常1単位として取引される単位ごとに判定します。器具・備品なら1個、1組、1そろいごとです(所得税基本通達49-39)。セットで使うものを、ばらばらの金額に分けて判定することはできません。

計算例:どの方法で経費にするか

例として、2026年中に次のものを買って、すぐ事業に使い始めたとします(青色申告・税抜経理)。

  1. 2026年2月に買ったプリンター: 8万円
  2. 2026年3月に買ったデスク: 35万円
  3. 2026年10月に買ったパソコン: 38万円

それぞれの扱い

  1. プリンター(8万円): 10万円未満なので、特例を使わなくても全額経費(消耗品費など)
  2. デスク(35万円): 3月に取得したので基準は30万円未満。対象外なので、通常の減価償却(器具及び備品の耐用年数で分けて経費にする)
  3. パソコン(38万円): 10月に取得したので基準は40万円未満。特例で38万円を全額経費にできる

同じ年に買っても、3月までと4月以後で基準が違う点に注意しましょう。

特例を使うと、その年の経費はどれだけ増える?

パソコン38万円を通常の減価償却(定額法・耐用年数4年、償却率0.250)で経費にすると、10月から使い始めた年の減価償却費は次のとおりです。

  • 38万円 × 0.250(耐用年数4年の定額法の償却率)× 3か月 ÷ 12か月 = 23,750円

特例を使えば、その年に38万円を経費にできます。ただし、翌年以降の減価償却費はなくなります。特例は経費にする時期を早める仕組みで、経費の合計額が増えるわけではありません。

所得が少ない年に一度に経費にしても税金はあまり減らず、翌年以降の経費がなくなります。どちらが有利かは、今年と来年以降の所得の見込みによって変わります。迷うときは税理士に相談してください。

手続き:青色申告決算書に書く

この特例を使うには、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を付ける必要があります(租税特別措置法28条の2第3項)。

ただし国税庁は、次の方法でも明細書の代わりになるとしています。

青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に、次の3点を書きます。

  • 少額減価償却資産の取得価額の合計額
  • 少額減価償却資産について租税特別措置法28条の2を適用する旨
  • 少額減価償却資産の取得価額の明細を別途保管している旨

そのうえで、資産ごとの取得価額の明細を手元で保管しておきます。

仕訳のしかた

特例を使う場合も、いったん資産として記帳し、年末に全額を減価償却費にする流れにしておくと、決算書の「減価償却費の計算」欄と数字がそろいます。

取得したとき

  • 借方: 工具器具備品 380,000円 / 貸方: 普通預金 380,000円

年末(全額を経費に)

  • 借方: 減価償却費 380,000円 / 貸方: 工具器具備品 380,000円

自宅でも使うパソコンなど、プライベートと共用する資産は、事業で使う割合だけを経費にします。考え方は家事按分とは?をご覧ください。

KS経費&売上管理での登録方法

複式簿記モードのメニュー【固定資産】の固定資産台帳で登録します。

  1. 資産名・取得日・供用開始日(事業で使い始めた日)・取得価額を入力します
  2. 償却方法で「少額減価償却(即時全額)」を選びます(20万円未満を3年で経費にする場合は「一括償却(3年均等)」)
  3. プライベートと共用する場合は、事業専用割合を設定します
  4. 年末に減価償却の仕訳を登録すると、使い始めた年に全額が減価償却費になります

青色申告決算書の画面では、減価償却費の計算の一覧に償却方法が「少額(即時全額)」と表示されます。決算書に書く「措置法28条の2を適用する旨」などの3点は、申告書を作るときに忘れずに書き添えてください。

年末の作業全体は決算準備(家事按分・減価償却・棚卸)もご覧ください。

よくある質問

白色申告でも使えますか?

使えません。この特例は青色申告をしている人が対象です。白色申告の場合は、10万円未満の全額経費と、20万円未満の一括償却資産(3年で均等に経費)が使えます。青色申告のほかのメリットは青色申告65万円控除の要件でも紹介しています。

12月に買ったパソコンも全額経費にできますか?

12月31日までに届いて、事業で使い始めていれば、その年の経費にできます。使い始めたのが翌年なら、翌年の経費です。月割り計算はなく、12月に使い始めても全額が対象です。

年の途中で青色申告をやめたら?

特例は、青色申告書を提出する人が対象です。青色申告の承認の取消しや取りやめがあった年の扱いは、個別の状況によって変わるため、税務署や税理士に確認してください。

10万円未満の備品も、この特例で処理するのですか?

いいえ。10万円未満のものは特例の対象外ですが、もともと買って使い始めた年に全額経費になります(所得税法施行令138条)。白色申告の人も同じです。消耗品費などの科目で記帳します。

まとめ

  • 青色申告の個人事業主は、40万円未満(2026年3月31日までの取得は30万円未満)の資産を、使い始めた年に全額経費にできる
  • 年間の合計は300万円まで。開業・廃業の年は月割り
  • 適用期限は2029年(令和11年)3月31日までの取得分
  • 白色申告・雑所得の副業・貸付け用の資産は対象外
  • 税込・税抜はふだんの経理方式で判定し、送料などの付随費用も含める
  • 青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄に、合計額・措置法28条の2を適用する旨・明細を保管している旨を書く

制度の適用や有利・不利の判断は、状況によって変わります。迷うときは、税務署や税理士に確認してください。

参考(国税庁・e-Gov・財務省)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務上の助言ではありません。具体的な判断は税理士等の専門家や所轄の税務署にご確認ください。

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